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東京高等裁判所 昭和25年(う)3342号 判決 1950年12月02日

被告人

鈴木専吉

主文

本件控訴はこれを棄却する。

当審の未決勾留日数中六十日を被告人が言渡された刑に算入する。

理由

弁護人秋根久太の控訴趣意について。

記録によると原審に於て、弁護人は被告人は唖者で責任能力を完全に欠如しているから、刑法第四〇条前段に該当する旨主張していること論旨のいう通りである。

しかしながら原審は被告人は唖者ではあるが完全責任無能力者とは認めずして、同法条の後段を適用している。これによると右弁護人の主張に対し刑事訴訟法第三三五条第二項の要求する判断即ち被告人は完全責任無能力者でないという判断はこれを示したものと認むべきものである。蓋し右判断を示すということは右主張に対しその採否の断定を示せばよいので、断定の理由を示す必要はないからである。そして全記録を精査して見たが、被告人は唖者ではあるが、心神喪失者に比較せらるべき完全無能力者と認むべきものではない。原審が被告人を心神耗弱者に比較せらるべき限定された責任能力者と認めたについて事実の誤認もない。又審理不尽と認むべき点もない。従つて法令の適用に誤りもない。なお原判示には被告人は唖者であるという明示はないが、刑法第四〇条後段を適用した擬律を待てば暗黙に左の事実を示したと認むべきであるから原判決には理由不備の違法もない。論旨はこれを採用せぬ。

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